天然染色について
西アジア遊牧民の絨毯の染色には、さまざまな繊維(羊毛、絹、綿など)を、さまざまな方法によって染色できる天然染料が長い間使われてきました。
天然染色とは、さまざまな植物や昆虫に含まれる染色物質を使った染色方法です。
その材料には、植物の根、茎、葉、花とともに昆虫も、乾燥されるか時には新鮮な状態でも使用されます。
染料の材料と特徴
天然染料を使用する過程で、青色を得るために藍色染料を提供するホソバタイセイ(Isatis tinctoria)と、ホソバタイセイの30倍の藍色染料を含む、インドから来るタイワンコマツナギ(Indigofera tinctori)も使用されました。
日本での藍染めは、藍( Persicaria tinctoria = タデ科)の葉からインジゴ染料を作って行いますが、トルコではホソバタイセイを用いました。
この植物は南ヨーロッパ原産で中世には盛んに栽培されました。
その利用方法はアイと似ており、葉を乾燥させた後、醗酵させて藍玉を作ります。それからその後化学合成藍色染料は、天然藍と化学的に同一に合成され、トルコ市場には第一次世界大戦の直前に導入されました。
赤色のために最も広く使用されている染料植物はセイヨウアカネ(Rubia tinctorum)です。
ミョウバン色止め剤によって黄色がかった赤色を出すだけでなく、異なる色止め剤を使用することにより、非常に多様な赤色のトーンと、さらには紫色を得ることが可能です。
根染料にはさまざまな染色方法が知られており、そのひとつが有名なトルコ赤の染色です。
根染料の中には19の異なる染色物質が含まれています。
赤色が根染料から得られないばあい、昆虫が使われました。赤い染料を含む昆虫にはコチニール、ラック、ケルメスが挙げられます。
アナトリア地方では赤と青の色が得られる植物としてセイヨウアカネとホソバタイセイしかありません。
それに比べ、黄色が得られる植物は20種以上にのぼります。
中でもホザキモクセイソウ(muhabbet çiçeği/Reseda Iuteola)からは、数世紀を経た古い絨毯にさえ残るほどの輝くような黄色が得られます。
そのほかにも、次のようなものが使われます。
玉ねぎの皮
セージ
サフラン
ハグマノキ(boyacı sumağı/Cotinus coggygria)
白いカモミール
黄色のカモミール
ザクロの皮
ユーフォルビア
ゲンジェ(Datiscaceae)
緑色に使われる天然染料は、調査されたかぎりすべて青色と黄色の混合です。
茶色の染色に最も重要な材料はクルミの殻で、新鮮な緑のものも乾燥したものも使われます。
黒色はタンニンを含む植物を鉄色止め剤で処理することにより得られます。
使われる材料は次のようなものです。
ヒノキ科クロベ属植物の実
オーク・アップル
ドングリの殻
ウルシ科植物スマック(Sumac)の葉
ザクロの殻
この方法での染色には、光の影響による羊毛の腐敗という欠点があります。
影響は10∼20年で発生しますが、はっきりと現れるまでには数年かかります。